常総のまちづくり全体図

えんがわハウス物語その1

えんがわハウスを作ろうとしている場所は、常総市の南部(旧水海道市)の住宅地にあります。橋下町、森下町の二つの地区で取り組んできたので、もりはしプロジェクトと呼んでいます。この地区の特徴は、食品工場などで働く日系ブラジル人の方が多く住んでいるということがあります。
 

3つの町とえんがわハウスの位置関係

3つの町とえんがわハウスの位置関係

 
コモンズは、20159月に起きた常総水害後に空き家になった建物の修復や再生に取り組んできました。常総市は水害後に日本人の人口が2年で1割減りました。床上浸水が4050センチだったとしても、それが4日続けば水が壁裏の断熱材に浸透し1階の床と壁を全部を交換することになりました。そのリフォーム代が800万円くらいかかるのに対し、床上1m未満には支援金が出ず、義援金も市内の床上浸水5千世帯で分配したら25万円でした。そのために家の再建をあきらめた人が街を出て行ったのです。
 

水害時の3つの町の状況

水害時の3つの町の状況

 
常総の復興のためには、この空き家を人が集える場として再生し、そこを拠点に安心できるコミュニティを作る必要があると思い、私たちは物件探しから始めました。最初の物件は旅館でしたが、借金の抵当に入っていて行政補助が受けられないため断念。
次の提供の申し出があった戸建てはボランティアの力で300万円で改修し、事務所兼集会所などで活用してきました。今後はゲストハウスとして活用します。
 

空き家からJUNTOSハウスへ

空き家からJUNTOSハウスへ

 
3つ目の物件は50年前に作られた診療所とお医者さんの大きな屋敷です。お医者さんは亡くなられていたためご家族と知り合えたのが水害の1年後でした。当初は使わないので地域に役立つならどうぞとの話でした。そこで、多くのボランティアで荷物を片付け、床や壁の板をはがし、2棟ある住宅の中に入れる状況にしていきました。
 

JUNTOSの社会活動

JUNTOSの社会活動

 
片付けが終わった所で賃貸契約をと思っていたら状況が変わりました。この土地(500坪)を全部買いたいという方が現れたのです。持ち主は所有権を移したいので購入する方を優先したいとのことでしたので決断を求められました。撤退するか購入するかです。私は購入しますので待ってくださいと申し出ました。広い庭のある屋敷は地域の方が集う場として最適でしたし、周辺に暮らす方々が是非残して欲しいと話されたからです。
         

寄せ書き

寄せ書き

 
沢山のボランティアが直してきた家が壊されるのを見たくないとも思いました。診療所だった建物も人が集っていた場所でしたし、水害でファミリーレストランが無くなって以来、お茶飲み話ができる場が欲しいという声も沢山聞きました。ですので診療所はコミュニティレストラン兼集会所に、住宅棟は住民が助け合い活動をする場として活用できるとイメージできました。
 
愛知県にある複合施設を見たこともヒントになりました。木の建物にはレストランと庭と小さな保育園があり、そこでは外国籍の人や障がいを持つ人が自然な形で働いていました。このような場を常総でも実現すれば多様な人が仕事ができ、皆が家から出て集まってこられるようになる、そのためにもこの場所は絶対に残そうと思いました。問題は資金をどうするかです。
 

えんがわハウス物語その2

土地建物を買い取る決意をしたのが2年前の2017年春です。500坪の土地購入に3千万円、さらに改修費も同じくらい必要になります。まず建物の活用法を考えました。地域の生活ニーズに応え、多様な人の助け合いと交流の機会を作ることを基本に据えました。そこで考えたのが多文化保育です。10年近くこの地に多い外国籍の子の学習支援をしてきて、就学前の支援と高校卒業後の仕事づくりが課題と感じていました。多文化保育なら学校の入り口と出口の両方の課題をクリアでき、市から小規模保育の認可が得られれば収益も見込めます。そのための住宅胸の改修費は、県の産業大県基金に補助申請し、20184月に保育はスタートしました。
 

多文化保育事業の立ち上げ

多文化保育事業の立ち上げ

 
旧診療所はファミレスの代わりとなる飲食と集いの場、母屋と庭は多世代多文化交流す拠点と位置付け、全体を「えんがわハウス」と名付けました。住民や大学院生からもアイディアを頂き、国土交通省のスマートウェルネスという補助事業に申請し、2017年秋に企画が採択されました。
 2千万円の改修費の目処がつきましたが1千万円の自主財源と土地購入の資金作りが課題になりました。これだけのプロジェクトを水戸に本部のあるNPOで進めるのは難しいと考え、常総の知人と3人で空家再生を目的とした株式会社を設立。金融機関を回り、保育、貸館、飲食を行うと説明してもすぐに理解は得られませんでした。保育も保護料しか収益がない中、通訳スタッフまで雇用したので赤字続きです。さらに土地を買うなどリスクが大きいと色々な人に言われ悩みました。
 それでも1年保育を続け、母屋の自主改修をコツコツ続けられたのは、多文化保育の可能性を実感できたことや、それをメディアが取り上げてくれたこと、落語会やクリスマス会を地域の皆さんが楽しんでくれ、やはりこの場なら皆が元気になると思えたからです。毎年来てくれるボランティアや寄付の申し出も励みになりました。
 

母屋の改修

母屋の改修

 
 昨年は災害が続き、福岡や岡山に行きましたが、被災した住民は皆、心の復興という難問に直面します。常総で空家を活かしたコミュニティ再生のモデルができれば被災地の希望にもなると感じました。 とにかく事業立ち上げと、改修と、資金作りにもがいた1年でしたが、2018年度末に土地購入資金の融資が決まり土地が取得でき、国の改修費補助も決まりました。保育も1年後には認可が受けられそうです。あと1年保育を維持し、夏までに地域の人たちとコミュニティレストランの開業準備をし、改修費の自主財源1千万円を作る、これが今年度の目標です。ぜひ応援してください。